INSECTA 2023 conference
INSECTA 2023 conference(https://insecta-conference.com/,ドイツ・マルデブルク,9月13-14日)
この会議は,Pflanzenöltechnologie Magdeburg e.V. (PPM) とLeibniz-Institut für Agrartechnik und Bioökonomie e.V. (ATB)が主催するもので,2015年にマクデブルクで初の全国的なINSECTAを開始し,2016年以来,PPMとATBによって共同開催されています.主に学界と産業界の国内外の専門家が参加し,その目的は「継続してINSECTAが参加者にとって主要な昆虫科学技術カンファレンスであり続け,学際的なコラボレーションを確保すること」です.ドイツを中心に,ヨーロッパ各国,アフリカ,中国などから参加がありました.
新しいトピックとしては,基本的なこれまでの研究に加え,アレルゲンと食品の安全性,健康上の利点,人工知能の活用,さらなる利活用(フラス・浄化・バイオエタノール)などがあり,実際に発表のあった主要な対象昆虫としては,farmed insects, black soldier fly, mealworm, cricket, silkworm, Jamaican field crickets,注目キーワードとしてはfood and feed chains, microbiome, insect-composted organic fertilizer, frass, bioaccumulation, bioethanol, welfareなどでした.
この会議で,大学院生の秋山君とMOS君が次のポスター発表を行いました.
- Self-selection feed design for crickets (Gryllus Bimaculatus) at
different growth stages using food waste - The potential of monitoring system for Gryllus bimaculatus based on
loadcells and computer vision
EUにおける昆虫食品の安全性
9月28日に正式にキックオフする,農林水産省RS事業「持続可能な農林水産業推進とフードテック等の振興に対応した未来の食品安全プロジェクトのうち、食用昆虫中の有害物質のデータベース化、管理手法の確立」の一環として,INSECTA 2023 conferenceに参加,情報収集を上記のように行いました.
ヨーロッパではアレルギー問題を除き,昆虫は基本的に安全な食品という理解です(昆虫種と飼育方法,環境により異なる).理由は,EFSA(EUROPEAN FOOD SAFETY AUTHORITY)で,2015年より科学的な検討も行いながらその安全性が保障され,「新規食品」として現在EUでは4種類の昆虫が正式に認められている事実があるからです.
EFSA(EUROPEAN FOOD SAFETY AUTHORITY).2022
Novel foods: allergenicity assessment of insect proteins
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200910
EFSA(EUROPEAN FOOD SAFETY AUTHORITY).2022
Insects in food and their relevance regarding allergenicity assessment
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200909
上記の中で,「欧州グリーンディールにおける「ファーム・トゥ・フォーク」戦略は、持続可能な食料システムへの移行を加速し、食料システムを公平で健康的で環境に優しいものにすることを目的としています。昆虫は農業の循環に貢献しており、伝統的なタンパク質源を補完する理想的な候補です。」と明言されています.
昆虫食品の安全性の担保のみではなく,EUの新しい食品産業政策「Farm To Fork戦略」で昆虫生産を挙げていることが大きいと考えます.日本の場合,農林水産省の「みどりの食料システム戦略」がこれに該当し,その中で「新たなタンパク資源(昆虫等)の利活用拡大」と位置付けられています.
Farm To Fork戦略
EUの新しい食品産業政策「Farm To Fork戦略」を読み解く | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/a718804066114a95.html
EUで新規食品として認められた4種類の昆虫(ミールワーム,トノサマバッタ,ヨーロッパイエコオロギ,ガイマイゴミムシダマシ)
ミールワーム:「新規食品」としてテネブリオ・モリトール(粉虫)の乾燥幼虫の市販を認可
EU委員会の施行規則2021/822
Amtsblatt der Europäischen Union(2021):DURCHFÜHRUNGSVERORDNUNG (EU) 2021/882 DER KOMMISSION, vom 1. Juni 2021
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/DE/TXT/HTML/?uri=CELEX:32021R0882&from=EN
Locusta migratoria(トノサマバッタ):冷凍、乾燥、粉末のロークタミグラトリアを新規食品として市場に投入することを承認
EU委員会施行規則2021/1975
DURCHFÜHRUNGSVERORDNUNG (EU) 2021/1975 DER KOMMISSION
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/DE/TXT/HTML/?uri=CELEX:32021R1975&qid=1673877231022&from=EN
Acheta domesticus(ヨーロッパイエコオロギ):冷凍、乾燥、粉末のアチェタドメスティックスの新規食品としての市場投入を承認
EU委員会施行規則2022/188
DURCHFÜHRUNGSVERORDNUNG (EU) 2022/188 DER KOMMISSION, vom 10. Februar 2022
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/DE/TXT/HTML/?uri=CELEX:32022R0188&from=EN
(関連)
部分的に脱脂されたアチェタドメスティックス(ハウスクリケット)粉末の新規食品としての市場投入を承認し、施行規則(EU)2017/2470を改正
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/DE/TXT/HTML/?uri=CELEX:32023R0005&from=DE
Alphitobius diaperinus(ガイマイゴミムシダマシ):幼虫を冷凍、ペースト状、乾燥および粉末状の新規食品として市場に出すことを承認
EU委員会施行規則2023/58
DURCHFÜHRUNGSVERORDNUNG (EU) 2023/58 DER KOMMISSION
, vom 5. Januar 2023
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/DE/TXT/HTML/?uri=CELEX:32023R0058&qid=1673877279407&from=EN
ヨーロッパでは,温暖化などの環境問題,タンパク質を中心とした食糧問題,フードロス,肥料やバイオエネルギーなど多岐の社会問題を同時に解決するキーワードとして「昆虫」が着目され,特に2013年以降,研究・開発が行われてきました.現在の議論に,昆虫生産の目的を,①食用,②畜産や養殖のための飼料用,③その他生物資源(浄化作用,肥料,バイオエタノールなど)として活用するのかで方向性が大きく異なっているようでした.
特に環境問題への認識から,日本より社会問題解決のための研究・開発や新規産業として昆虫市場は認識されていると思いますが,日本と違って昆虫食文化はヨーロッパになかったこともあり,食用昆虫については日本と同様の忌避などの議論があり,日本と同様に食品として普及させるために,我々に近い課題と戦略を持っていることも分かりました(オランダ・ワーゲニンゲン大学).
RS事業へのレポートの一部より抜粋(東京農業大学 佐々木 豊)
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